「キャリア教育」ってなあに?④ ―大学生のインターンシップ

2019年06月17日 野浪 晶子

前回の記事では、大学キャリア教育の授業の実施状況と「自己理解・社会理解」の考え方について触れました。今回は大学生の「インターンシップ」について見ていきましょう。

1.インターンシップの教育的意義

まず、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省が合同で提示している「インターンシップの意義」から引用すると、次のようになります。

 

企業等の現場において、企画提案や課題解決の実務を経験したり、就業体験を積み、専門分野における高度な 知識・技術に触れながら実務能力を高めることは、課題発見・探求能力、実行力といった「社会人基礎力」や「基礎的・汎用的能力」などの社会人として必要な能力を高め、自主的に考え行動できる人材の育成にもつながる。


引用: 文部科学省・厚生労働省・経済産業省(2014)「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(抜粋)

このあともう少し文章が続くのですが割愛します。大学生を対象としたインターンシップは、「実務を経験」したり、「社会人としての必要な能力を高め」ることで、結果的に学生の自己成長を促すことを目的としています。これが、インターンシップの「教育的意義」ですね。

それは企業側も原則的には知っているはず…なのですが、近年では「新卒採用のプレ活動」として位置付けている企業が多いようです。企業側のメリットとして、「優秀な人材を早期に発掘できる」「入社前後のイメージギャップを防ぐことができる」などと言われています。後者は学生側にもメリットになるのかもしれません。

採用直結型のインターンシップが増えているの理由の1つとして、ここ数年かけて行われた就活スケジュールの「後ろ倒し」があげられます。たとえば、2013年度卒の広報活動(会社説明会等)は、 3年生12月に解禁されていましたが、現在は翌年3月の解禁。4年生10月に正式内定を出すことは変わらないので、実質的な採用期間の短縮となります。採用機会の確保にインターンシップが利用されているとも言えるでしょう。

2.企業の意向が色濃く反映されたインターンシップ

株式会社ディスコの「インターンシップに関する調査」によると、2020年卒の学生にアンケートをとったところ、学生のインターンシップ参加率は86.2%。こういったアンケートに回答するぐらいなので、自らすすんでインターンシップに参加する、主体性の高い学生が回答の対象となっていることが考えられますが、企業がインターンシップを実施する率(同74.9%)とともに、参加学生の率も年々高まっていることは間違いないでしょう。

出典:株式会社ディスコ キャリアタスリサーチ(2019)
「2020年卒特別調査 インターンシップに関する調査」

図1は学生が参加したインターンシップの「参加日数」と「プログラム内容」です。

参加日数のうち、「半日」と「1日」を合わせると6割あまり。海外のインターンシップは「数か月単位の長期」で、かつ「有償」が一般的ですが、日本では1か月以上のものは5%にも満たない状況です。

プログラム内容を見ると、「グループワーク」が8割近くにのぼります。肝心の「仕事体験」は3割を切り、「実務」に至ってはわずか5.2%。参加日数が半日や1日のインターンシップの内容は、「企業説明会」に準じるものがほとんど。学生にとっては就職活動の早期化にほかならず、「大学生の就業体験」というインターンシップの「教育的意義」からはかけ離れた印象です。

では、大学はこれをどう見ているでしょうか。

株式会社アイデム 人と仕事研究所の調査「キャリア支援・就職支援に関する大学調査(2017)」によると、「選考につながるインターンシップ」に反対する大学は、私立大学で61.2%、国公立大学では76.2%にのぼるといいます。

この調査における双方の意見をいくつか挙げてみましょう。まずは反対意見です。

「インターンシップ研修内容が教育的効果が得られるものであればよいが、企業のインターンシップ内容は往々にして、企業説明・業界説明に終始し、教育的効果に配慮したものではないため(私立)」「学生の視野が広がる前の囲い込みは、ミスマッチにつながる恐れもある(国公立)」

一方で、賛成意見はどうでしょうか。
「面接よりも長い時間、企業担当者と接するので、より人物面を見てもらえる機会になると思う(私立)」「今は、学生と企業・法人との接触時間が少ない。インターンシップを通じての相互理解は、双方にとって有意義である(私立)」

うーん…どうなんだろう。「参加しているインターンシップ生全員をつぶさに見ることはできないので、際立って優秀な学生のみピックアップしている」という人事担当の話も聞きます。そんなに人物面を見てもらえる場となるのか疑問に思います。

大学では、主にキャリアセンターなどの組織がインターンシップ情報を整理して学生に発信するケースが多いようです。なかには、「選考につながるインターンシップは掲載しない」と明確に打ち出している大学もあります。しかし、インターンシップ情報は企業のホームページや就職活動支援サイトにもたくさん掲載されていて、学校を介さずに応募することもできます。大学側が情報を制限しても限界があるでしょう。

私の担当するキャリア教育科目のクラス(主に1・2年生)では、「インターンシップには行ったほうがいいのか・行かないと不利なのか」などの質問が寄せられることがあり、関心が高まっているのを感じます。インターンシップの本質、その実態やリスク、「どのように活用していくべきなのか」について、指針を示しながらも学生にリアルな情報を伝えることも必要だと考えています。

3.社会理解・自己理解が深まるインターンシップの展開を

前回の記事では、社会理解と自己理解についてお伝えしましたが、就業の機会として提供されたインターンシップは、学校のなかだけで知識や情報を得るよりはるかにリアルな社会理解の場となります。

その経験を自分の特徴や今後のキャリアプランなどと照らして味わい、どのように位置づけるのか。社会理解から気づきや学びを得ていくことが深い自己理解につながります。

インターンシップを経験した企業に入社するというのも一つのご縁ですから、採用直結型のインターンシップは就職するための一つのチャンスとして捉えるのもいいと思います。しかし、本来は学生のキャリア形成のための場であるもの。実態を見ていると、企業の採用戦略色が強すぎるように感じます。教育的意義に立ったインターンシップの実施が大きく広がるよう願ってやみません。

インターンシップについてはまだまだ伝えたいことがたくさんですが、紙面の都合でここまでにしましょう。

次回は、多くの方に質問される「社会人大学院に通った経験」について。あくまで私個人の体験ベースですが、参考になればうれしいです。

野浪 晶子

日本キャリアパスポート協会理事。大学非常勤講師・キャリアコンサルタント資格取得講座講師など。CDA、キャリアコンサルティング技能士2級。法政大学大学院キャリアデザイン学修士。 民間企業人事職を経て現職。大学のキャリア教育実態に悩み、児美川孝一郎教授(法政大学キャリアデザイン学部)の著書『キャリア教育のウソ』を読んだことがきっかけで大学院へ進学。入学後、児美川教授に師事。協会では、誤解の多いキャリア教育を正しく伝えるためのセミナーや、企業研修を担当。私生活では自宅で母を介護。かなりそそっかしい性格。 https://www.career-passport.net/