「特定技能」と外国人労働者 ~企業内キャリア支援~

2019年04月08日 大橋 典子

2019年も始まってから4か月、桜の季節となりましたね。進学・就職など、わくわく・ドキドキ新生活をスタートされた方も多いのではないでしょうか。この4月からは、順次働き方関連法案も施行されるとともに、新しい在留資格「特定技能」も始まります。5年間で最大約34.5万人の流入が予定され、ますます日本で「はたらく・いきる」外国人材も増えていく年。今回は、彼らが十分活躍できる企業内キャリア支援について、お伝えできればと思います。

「外国人労働者」の定義

一般的に「外国籍の労働者」を指す場合や、「技能実習生」を指す場合があります。外国人に関係する活動は、在留資格により違いがあり柔軟なキャリアサポートが求められます。ここでは「外国人材」として共通的事項についてお話しさせて頂きます。

新しい在留資格「特定技能」

詳細は割愛いたしますが、今回外国人材が従事できるのは14分野、また転職ができることが大きな特徴といわれています。同分野内限定のため簡単に転職できるというわけではありませんが、やはり企業として定着して頂けるか気になるところです。

現在の外国人材

地域差はありますが、地方にも外国人材をお見掛けすることも多くなりました。昨年10月末の外国人雇用者数は約146万人。また週28時間まで働ける貴重な戦力、留学生も30万人計画は達成しているとの見方もあります。インターンシップの受入企業も増加しており、外国人材獲得に向けた動きは大きくなっています。

企業における受入れ整備

これらの変化に対して、準備は進んでいるでしょうか?

少し話しは変わりますが、1990年ごろから増加した南米出身日系の方々は、派遣など間接雇用がほとんどで、頻繁な転職により不安定な雇用が続いています。このような状況は、彼らの子どもたちの教育、キャリア形成に大きく影響しています。将来に向けて改善が求められているとともに、今までの教訓を新たな外国人材サポートに活かす。十分能力を発揮して頂ける環境を整えることが、さらなる企業の発展に繋がっていきます。

外国人材のお困りごと

まず、外国人材が直面する問題について挙げてみましょう。

A.ことばの壁

日本人でも日本語の使い方は難しい、と感じることあるかと思います。日本語技能検定3級の合格者でも、実際に日本で生活できる、仕事ができるまでには半年かかるともいわれています。もちろん個人差もあります。日本人と交流がほとんどない、いつも同じ単語しか使用しないなど、日本語が上達しないと悩んでいる方々もいらっしゃいます。

B.職場の慣習

暗黙の了解が多いといわれる日本社会。日本人なら自然と理解が深まっても、外国人材にはわからない状態が続いてしまう。例えば、入社当初はコピーや補助的雑務なども多いのではないでしょうか。しかし特に学歴のある外国人材は、「なぜそのような業務をしなければいけないのか???」と戸惑ってしまいます。それをなかなか相談できずに孤立し、静かに退職してしまうケースもあるのです。

C.海外で「はたらく・いきる」大変さ

自国以外で働くのは簡単ではありません。ましてや島国であるが故、独特の文化を育む日本。アニメなど見て膨らませた夢・期待と現実とのギャップに悩むことも多いと聞きます。覚悟して来日しても、やはり厳しい現実に直面せざるをえません。心の支えとなる家族がいない状況は孤独感を生み、仕事に集中できない状況を生じさせてしまうかもしれません。

企業内でのキャリアサポート

では、企業側にできることを考えてみましょう。

1.「やさしい日本語」の活用

「やさしい日本語」とは、1995年阪神淡路大震災時の教訓から考え出された、わかりやすい日本語のことです。日本語能力試験3級程度。小学校2~3年生が理解できる漢字、ひらがな、カタカナ表現のことを指します。いつどこで、地震などの自然災害にも巻き込まれるかわかりません。職場の防災・減災対策を含め、外国人材の安心安全にもつながる環境整備の一助とされてはいかがでしょうか。

2.コミュニケーションを続けること

やはり、「人と人とのおつき合い」です。「外国人」とひとくくりにはできません。例えばムスリムの方々でも、ひとりひとり考え方に違いがあります。対話の機会を作り、お互いの意見を共有していく。社長自らリードし、社員全員で取り組む姿勢。「定期的に」コミュニケーションを続けることがポイントなのです。

3.はっきりとルールを伝える

外国人材には明文化したルールを説明する必要があります。入社前また継続的に確認することで、業務遂行意識も高まります。「言いにくいな」と感じる場面もあるかもしれません。しかし伝えなければいけないことは、伝えなければなりません。実際話しをしてみたら、確認してよかった!というご経験もあるはずです。しっかりと伝えたことで曖昧さがなくなり、業務改善のきっかけになったともお聞きしています。

4.ちがいを楽しむ

「社内で相乗効果を生むというのが、なかなか想像できない」と、よく耳にいたします。今までの環境のままでは、お互い混乱してしまいます。「あれ?」「あれ?」という小さな疑問を解決していくうちに、シナジーがうまれるのです。採用計画から入社・教育など、個々のプロセスを見直す手間がかかるかもしれません。一時的に生産性低下を招くかもしれませんが、その後業績が伸びた例も多々お聞きしています。「ちがいを楽しむ」からこそ、ポジティブな効果をもたらすといえます。

5.はたらく・いきる人、として大切にする

外国人材が多く住む地域では、ごみや騒音問題が起こりやすい傾向にあります。企業の社会貢献が求められる時代。社外で起こした社員の問題にも、厳しい目が向けられるようになってきました。特に外国人材の生活面にも心を配ることで地元からも愛され、地域創生に貢献する企業が多いように思います。

6.帰国後のキャリアも視野に入れる

外国人材は定住化傾向にあると言われていますが、家族や友だちがいる国に帰国したい、母国再建に貢献したい、などお聞きします。ご本人の意思をしっかり確認しながら、長期的キャリアパスを示しサポートしていく必要があるといえます。

「おなじ」であり、「ちがう」ということ

上記は一例であり、一部、あるいは全部を対応しないとすぐに問題が発生するわけではありません。逆にすべてしっかりと対応しても問題が生じる場合もあるでしょう。外国人材は日本人と「おなじ」であり、「ちがう」という認識が重要です。「おなじ」部分は日本人と同じように関わり、「ちがう」部分は日本人との違いを十分理解しようとする適度な距離感が大切です。

これからの多文化共生

新しい制度は始まったものの、社会統合政策はまだまだこれからです。外国人材と一緒に働くだけではなく、「生活者」としてともに生きていく場面が増え続けるでしょう。温故知新。外国人材受入れ先進国に学びつつ、日本人がジブンゴトとして日本に適した仕組みを考えていく必要があります。明確なルールのもと、「人と人」として柔らかく対応していく。日本に貢献してくださる外国人材の働きやすさ・生きやすさは、日本人にとってもよりよい未来に繋がるはずです。お互いに歩み寄りながら、一緒に住みやすいに国にしていきませんか?

大橋 典子

アメリカの大学卒業(心理学専攻)後、姉妹都市・国際交流事業に携わる。その後、大手自動車関連企業におて社員教育などに従事。結婚・出産をきっかけに専業主婦として約10年過ごしたのち、キャリアコンサルタントを目指す。公益的組織を中心に、外国人労働者、外国につながりをもつ子どもたちへのキャリアカウンセリング・キャリア教育に参画。人生100年時代の「世界中どこでも自分らしくいきる!」社会づくり、海外との交流、学術的貢献にも関心が高い。多文化キャリアコンサルティング代表。