就職活動は学生の可能性を広げる発達プロセス

2019年04月01日 宮地 多佳

就職活動は、内定を得るための活動??

今年も就職活動が解禁され、はや1か月が経ちました。2021年卒からは、経団連が就活ルールを撤廃する決定をし、早期化・多様化が見込まれています。今年は例年にくらべ、インターンシップを導入する企業が増え、インターンシップの参加者から優先的に内定を出す傾向が見られます。現時点で、1割を超える学生が内定を獲得していると言われています。

そんな超売り手市場の背景から、「学生の就職支援って必要なの?放っておいても就職できるでしょ?」なんて質問をよくされます。

確かに、これまでに例を見ないほどの学生売り手市場です。就職活動のゴールを「内定獲得」と捉えるのであれば、100%に近い確率で叶うと思います。

しかし、キャリアコンサルタントが支援すべきゴールは、内定獲得なのでしょうか。

就職支援は学生の可能性を広げる発達支援

就職活動は、単に就職先を決定するプロセスではありません。学生ひとりひとりの可能性を広げる発達のプロセスです。その発達支援をすることこそが、キャリアコンサルタントの役割なのです。

就活を見据える3年生夏ごろから大学のキャリアセンターと接触する学生が多いのではないでしょうか。「自分は何に向いているでしょうか?教えてください。」「この業界のことが分かりません」「履歴書の文章が書けません」というように、自ら考える前に答えを求めにくる学生が多いのも事実です。それに対して、キャリアコンサルタントが「あなたは明るくコミュニケーション力があるから営業向き、だからこの企業どう?」と求人を直接マッチングしたり、「履歴書はこの構成でこう書くべき」と赤ペン先生になってしまうのは、残念です。

このように就職活動の段階から、キャリアコンサルタントがどのように関わるか、どのような支援をするかによって、その後の社会人スタートにむけた発達に大きく影響を与えます。

特に大切なことは、「自分で行動して、試行錯誤をして、自分で意思決定する」ことをキャリアコンサルタントが「促す」ことです。

たとえ内定先が第一志望でなかったとしても「自分で努力してやり切った」、という実感を伴えるかどうかとても重要なのです。それが、社会人になってからの自己効力感(自分にはできる!という自信)に繋がるからです。この自信に欠けていると、自ら考えて行動に移せない→行動しないから成功体験も得ることがない→成長しない、という悪循環に陥ります。就職活動は、未知なる社会に飛び出すための「自分の基盤づくり」をする大切な発達プロセスです。

就職活動は自分を変えるチャンス

学生から内定の報告を受けた時にもらった、印象深い言葉です。

「自分の力で決定できたことが、本当に嬉しいです!自信になりました」

これを読まれている方の中には、「自分で決めるのは当然だよね?」と感じた方もいるかもしれません。しかし、その学生は、もともと心配性で優柔不断であり、これまで自分で決断できないことが多く、そんな自分にコンプレックスを持っていました。

「A社とB社だとどちらが良いと思いますか?」「私はどの企業に向いているのでしょうか、決められません」というように、答えを求めに面談にやってきました。私が伝えたのは「私は決められない、自分で決めること。でも、決めるためのお手伝いはできます」というシンプルなことでした。その後、自分自身で情報収集に企業に出向いたり、教員や先輩に自ら働きかけ、比較検討しながら決定することができました。この自ら行動を起こし納得できる答えを出したことこそが、上述の「自信になりました」に繋がっていると思います。就職活動を通して、自分のコンプレックスを克服できたのです。

学生の可能性を広げる支援を!

大学のキャリアセンターの面談は、短い時間に限られることもしばしばです。そんなとき、どうしても「A社よりB社が安定して働けるよ。」「あなたのタイプだとこの企業に決めたほうがいいよ。」「面接ではこう答えよう。」というように、キャリアコンサルタントが「指示」してしまいがちです。しかし、その「指示」が学生の成長の機会、可能性を奪ってしまう危険性があることを常に念頭に置いて支援していきたいものです。就職活動を通して、その後の社会で自分らしく働く礎を築いてほしいと願います。

宮地 多佳

大学卒業後、物流会社の社長秘書、求人広告営業、人材サービス会社のコーディネーターを経て、フリーのキャリアコンサルタントとして活動中。国家資格キャリアコンサルタント、2級キャリアコンサルティング技能士。自分にふさわしい働き方を模索した自身の経験をもとに、「その人らしく働く」ことの実現をお手伝いします。高校生・大学生の就職支援、転職者支援、企業におけるキャリアコンサルティング、研修、採用代行など、領域を問わず活動中。年間のべ550件の面談、60件の研修実績あり。 michisirube7@gmail.com