海外からの帰国者が戸惑う「価値観の変化」とその対処法

2019年03月06日 hiro.kubo

キャリアコンサルタントの仕事をしていると、「海外から帰国後、転職を繰り返しています。日本の生活が息苦しく感じて時間ばかり過ぎて焦っています。」というご相談をお受けする事があります。

“グローバル”という言葉が浸透した今日。海外留学や海外勤務など活動の場が世界に広がる一方で、帰国した後にキャリア形成と社会生活に悩み、生き辛さを感じる方がいらっしゃいます。

ご本人を取り巻く周囲の方々(上司、同僚、家族、友人など)は期待を込めて、「帰国後は海外経験を活かして華々しくキャリアアップするに違いない」と思いがちですが、実際はそう単純ではないようです。帰国後に感じる居心地の悪さや閉塞感から、また海外に戻りたいと考えてしまう事も少なくありません。

今後、更に海外での活動が身近になると予想される中で、ご本人のみならず周囲の方々にも関係し得る事柄だと考え、キャリアコンサルタントの視点を通して、その原因と対処方法をご紹介したいと思います。

日本に帰ってきたのに何故かしっくりこない

帰国後の生活に馴染めない状態については「逆カルチャーショック」「帰国うつ」と一般的に呼ばれています。定義としては、滞在期間の長期・短期に関わらず一定期間を海外で生活した人が帰国後に、文化・社会習慣・コミュニケーションなど様々な場面で違和感を覚え、生き辛さを感じる状態を言います。

日常生活で感じる違和感として、次のような例があります。

人々の表情が暗く目があっても笑わない。(海外の習慣で微笑んでしまうと警戒される)
・マニュアル化された通り一遍の接客に、ロボットのような冷たさを感じる。
・移り変わりの速い流行語や略語についていけない。
・街中の広告量に疲れを感じ、大量消費社会に疑問を感じる。
・海外経験を成果として認めてもらえず、冷ややかな対応をされる。
・自分の考えや意見を話すと変人扱いされる。

そんな事で?と思われるものもあるのではないでしょうか。ご本人にしても、以前は気にも留めなかった事への違和感に驚かれるようです。違和感は次第に焦り・不安・怒り・諦めへと繋がり、やがては仕事や人間関係、社会生活にまで支障をきたしてしまうこともあります。

なぜ違和感を覚えるのか

このような状態をどうにかしたいとご相談に来られる方々は、ご自身がなぜそこまで落ち込むのか理由が判らず、やる気や自信を失っています。お話を伺う中で、「海外生活で何に驚き、何が大変だったか少し思い出してみませんか?」とご提案するのですが、殆どの方が当時の事について、感情や表情を交えて生き生きと語り始めます。言葉や習慣の壁を乗り越える為に必死で努力したこと。生活に必要な手続きが遅々として進まず、当初は苛立ったが慣れて寛容になったこと。不便さに直面する度に工夫する力が身に付いたこと。それらを語っていただく理由ですが、今のご自身は海外生活に適応する為に、沢山の努力を重ね変化した“海外仕様”である事に気付いていただくためです。

更に、今後必要となるのは“日本仕様”になるための少しばかりの調整と、その為に一定の時間が必要な事をお伝えします。加えて「逆カルチャーショックはとても自然な現象であり、海外で頑張った証」であるとお話しします。すると多くの方が一様に安堵した表情を見せ、中には理由が判って思わず涙ぐむ方もいらっしゃいます。

まずは帰国後の違和感を受け入れる事です。次に海外経験で何を身に付け、価値観がどう変化したかを整理する。そうすれば、求める業種・職種や生き方の方向性が少しずつ見えて行動に移せるようになり、その後はご本人が本来持っている力を発揮して道は拓けていくでしょう。

帰国後の違和感への対策は、ご本人を含め周囲の方々も、日本の生活に戻れるかどうかなど疑問にも抱かないことから、一部の大企業や組織を除き対策は講じられていないのが現状です。更に残念なことに、勤勉で意欲も高く現地に適応できた人ほどその違和感は大きく、結果、会社を辞めてしまうといった貴重な人材の流出は会社にとっても大きな損失となっています。更に、ご家族としても本人の落ち込みの理由が判らず、家庭内に重く暗い日々が続くなど、「逆カルチャーショック」は周囲にも大きな影響を及ぼします。

悩むのは自然なこと、頑張った証です

大切なのは関連する情報や対策を知ることだと思います。知ることで違和感も多少は受け入れ易くなるのではないでしょうか。

「逆カルチャーショック」の対処法についてまとめます。

1.海外生活に適応した際の努力を振り返り、自身が大きく変化した事を自覚する。母国に戻るという感覚ではなく、新しい文化に飛び込むという意識を持つ。
2.「逆カルチャーショック」はごく自然な反応。受け入れるには一定の期間が必要。
3.海外経験で身に付けた事は何か、帰国して感じたことは何かを、価値観の変化を整理する為に書き出す。可能ならば、キャリアコンサルタントや周囲の人に聴いてもらう。

様々な価値観の中で

異なる価値観や文化との共生がかつてないほど求められている今の時代。恐らく今後は、海外仕様/日本仕様などと単純にはいかなくなるでしょう。そんな時代だからこそ、様々な差異を肌で感じた海外経験者の適応力・寛容さを活かせると感じています。そして、多様化する社会では個々の軸、つまり自分はどうしたいか?どうありたいのか?をこれまで以上に意識しなければならないと感じます。今後も、キャリアコンサルタントの仕事を通して、ご相談にお越しになった方のそれら問いの答えを一緒に探していけたらと思っております。

クボ ヒロ

航空会社空港カウンター及び系列ホテルのフロント業務に5年従事。英国留学後、専門家海外派遣や留学生受入れなどの公的事業に15年携わる。キャリアコンサルタント資格取得後は、海外から帰国した方の再就職支援のカウンセリングやセミナー、ワークショップを行なう。現在は都内公共機関で中高年の就職支援に携わっている。 旅先でその土地の文化にふれることが好きで、行き先は結構どこでも大丈夫だったりする。絵画鑑賞が趣味で自身も絵を描くことがある。落語で笑い、手話を学び、たまにのんびり海を眺めたりする。 2級キャリアコンサルティング技能士 TCCマスターキャリアカウンセラー