外国人留学生のキャリア教育・就職支援

2019年03月05日 yume

初めまして。キャリアコンサルタントの董 夢(トウ ユメ)です。私は現在、行政機関で外国人の就職/転職支援や各大学で就職支援講座講師の仕事をしています。

ここ最近、外国人労働者の問題が非常に注目を集めています。日本では、不足する労働力の一部を外国人が補うという構図があり、外国人労働者の数が2018年末に128万人を越えました。しかし、外国人と一口に言っても、所有する在留資格(ビザ)によって身分が違います。ここでは、そういった背景の詳細な説明は省き、私が日頃支援している外国人留学生の現状、そして私自身が元留学生としての経験を活かしながら従事するキャリアコンサルタントの役割をお伝えしたいと思います。

働く外国人というと、みなさんは工場で働いている現場の労働者、または技能実習生という「単純労働力」をイメージするかもしれません。そちらは一般に「外国人労働者」として分類されています。一方、外国人留学生とは、日本語学校や専門学校以上の高等教育機関に在籍し、日本で「勉強する」ことを目的に滞在している人のことを指しています。卒業後に日本社会で活躍することを期待されていることから、日本では「高度人材」の「卵」ともよばれています。普段、みなさんがコンビニエンスストアやレストランでよく見かける外国人はほとんどが学校で勉強しながらアルバイトしている留学生になります。

昨今、日本政府が国策として注力してきたのがこのような外国人留学生数の拡大です。その結果、留学生数は2018年5月時点に約29万人と10年前の2008年度比で1.4倍に増加しました。ただ、そんな留学生を悩ませているのが就職の壁です。彼らは学校を卒業した後、6割以上が日本国内での就職を希望しているといわれますが、2016年度の就職率は36%に過ぎません(日本学生支援機構調査による)。国内の大学生全体の就職率が97.6%(同年度)と、売り手市場といわれる状況とはかなりの乖離があります。留学生の支援現場にいると、就職活動に苦労し諦めてその他の教育課程に進学したり、母国に帰国する留学生の姿をよく見かけます。

日本特有の「就活ルール」の中で、迷子になった留学生たち

なぜ、留学生たちはこんなに苦労するのでしょうか?私自身も中国出身の元留学生であり、約10年前に日本での就職活動を経てある大手自動車部品メーカーに就職しました。日本の就職活動には、独特なルールや雇用慣行があります。その決まりごとや風習に従わないといけないような空気に包まれ、私自身もよく理解できないまま周りの日本人学生の行動をマネしながら就職活動をしていました。当時の状況と比べると、留学生の国籍や就職意識が著しく変化し、さらに受け皿となる企業側の採用状況も大きく変わろうとしていることを肌で実感しています。ここでは、日ごろの支援現場で就職活動の壁にぶつかっている留学生たちに、キャリアコンサルタントとしてどう向き合っているのかをお伝えします。

日本語での表現力の向上および文化の違いに対するアプローチ

留学生は多かれ少なかれ、日本語能力という面でハンデを抱えています。在日期間や日本語の学習期間、年齢や学歴などにより日本語能力に差はありますが、就職活動をスムーズに行うにあたって一番大きな阻害要因は日本語能力でしょう。なぜならば、ほとんどの会社において、留学生にも日本人とほぼ同レベルの日本語能力が要求されているからです。近年、日本企業でもグローバル化に呼応して外国人採用が積極的になったこともあり、日本語能力に対する要求がずいぶんと穏和されました。それでも、多くの留学生が「自己PR」や「志望動機」といった履歴書や面接で必ず問われる定番の質問に戸惑い、質問の意図を十分に理解できなかったり自分を上手に表現できない人が多いのです。また日本語の上級者でも、「どこまで自分を積極的に売り込んでいいのか」、「日本で働く職業観についてどこまで本音で伝えていいのか」というような相談もよく受けます。日本語能力に関連しつつ、実際には「文化の違い」にも遭遇するようなキャリア相談がよくあります。

キャリアコンサルタントとしては、履歴書の書き方や、面接の指導に留まらず、これまで私自身が経験で得たことを伝え、なぜ日本ではそのようなことが求められるのか、そうしたルールの背後にある日本人の考え方や価値観とは何か、を留学生にも理解してもらうようにしています。その反面、日本人学生の就職支援スタイルをそのまま留学生にあてはめ、暗黙のうちに日本社会へと合わせることもまた、ややもったいない気がしています。かれら留学生のもつ文化的背景を理解し、かれらの立場から的確な相談対応を行い、抱えている戸惑いや不安を軽減するとともに、留学生としての特性(個性)を発揮し、社会人として日本社会にソフトランディングさせられるよう導くことが、キャリアコンサルタントの素晴らしい役割だと意識しながら、日々の相談対応に取り組んでいます。

「自己のアイデンティティ」を保持するようなサポート

日本で就職を選択する留学生は、「なぜ日本で就職するするのか」「今後日本に定住するのか、帰国するのか」「自分にとって日本社会で働くことの意味は何か」を自らの言葉で企業に伝えることが求められています。しかし、実際のところ、明確にそれを伝えられる留学生はとても少ないです。日本語能力の問題もあって、日本語で十分に伝えられないということもあるかもしれませんが、現場で感じたのは、多くの留学生にとって就職を成し遂げることが目的化し、本質的に「日本社会で働く意味」を忘れてしまっているように感じます。特に在日期間が長く、来日後に留学生として日本語を習得し、異文化の中で努力した結果、時にはあまりにも「日本人化」してしまった場合があります。私自身もそうでしたが、国境を越え、日本語を習い、日本での留学生活を通して頑張ってきたことで、いつの間にか自分のアイデンティティを見失ってしまうと、これからの方向性を考えられなくなり、表現できなくなってしまいます。留学生自身が「日本社会で働くことの意味」を明確に認識し、就職活動をすることは、採用企業側にとってとても重要なポイントになります。キャリアコンサルタントとしては、留学生自身の「アイデンティティ」を保つ支援、そして「日本で働く意味」を見出すことができるよう、自身を見つめ直してもらえるように、カウンセリングしています。

* 留学生の就職の課題や、キャリアコンサルタントとしての役割の話題はまだまだ書き足りません。例えば、就労可能な在留資格のことや企業側へのアプローチなどは、紙幅の関係で今回は割愛しています。また次回の記事にてご紹介いたします。

董 夢

中国出身の元留学生として2001年に来日。名古屋大学大学院を卒業後、大手自動車部品メーカーに就職。企画・営業・人事労務・育成の業務に携わった。2014年より外国人留学生の生活・就職サポートに携わり、現在行政機関にて外国人留学生の就職支援を担当するとともに、愛知県主要大学にて留学生就職支援のイベントやセミナー講師を務め、留学生の就職支援体制作りに取り組んでいる。また企業で研修講師や採用サポートの仕事にも携わる。 所有資格:国家検定2級キャリアコンサルティング技能士、国家資格キャリアコンサルタント、JCDA認定CAD Email: dreamsky0416@yahoo.co.jp