国家資格キャリアコンサルタントによる企業内の人材育成

2019年02月19日 井上 夏海

キャリアコンサルタントとは?

キャリアコンサルタントという国家資格をご存じですか? キャリアコンサルタントとは、平成28年4月より創設された国家資格で、労働者のキャリア形成を支援します。 キャリアコンサルタントの活躍の場は様々で、ハローワーク等の公的機関や人材紹介会社、大学のキャリアセンターなどがあります。また、企業内でも、従業員のキャリア相談等を行う目的でキャリアコンサルタントの専門部署が設置されていたり、外部キャリアコンサルタントに委託するケースなどがあります。

国家資格となった背景

平成28年4月1日に施行された改正職業能力開発促進法では、労働者は自ら職業生活設計(キャリアデザイン)を行い、これに即して自発的に職業能力開発に努める立場であることが規定されました。そして、この労働者の取組みを促進するために、事業主が講ずる措置として、キャリアコンサルティングの機会を確保し、その他の援助を行うことが規定されています。 背景には、AIなどの技術革新やグローバル化などがあります。変化の激しい時代においては、与えられた仕事をこなすだけではなく、変化に対応し、自ら考え行動する人材が求められています。これまでのような画一的な労務管理から、労働者一人一人がそれぞれの職業生活を選択し、必要な能力開発を行うことが必要とされているのです。

企業内でのキャリアコンサルタントの活躍が期待

国家資格キャリアコンサルタントは、2024年までに10万人に増やす計画がされていて、そのうち6万3千人は企業内で活躍する事が望ましいとされています。また、企業の従業員を対象に、定期的にキャリアコンサルティングを実施する、セルフ・キャリアドックの導入が推奨されています。企業内での人材育成のツールとして、キャリアコンサルタントの役割が期待されています。

キャリアコンサルティングとは?

キャリアコンサルティングとは何をするのでしょうか? キャリアコンサルティングの定義は “労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発および向上に関する相談に応じ、助言および指導を行うこと” とされています。 キャリアコンサルティングでは、就職や転職の相談を受けるだけではなく、就労中の労働者のキャリア形成を支援します。日々忙しく働いていると、目の前の事しか見えなくなり、自分のことをじっくり考える時間を持つことは難しいのではないでしょうか? キャリアコンサルティングは、自分についてじっくり考える時間です。自分のことを語る機会は意外とないものです。立ち止まって“ありたい自分”について一緒に考えていきます。 また、従業員の悩みや課題を聴きとることで、組織の課題発見、解決に繋がります。

企業内にキャリアコンサルティングを導入により期待される効果

企業内にキャリアコンサルティングを導入すると、どのような効果が期待出来るのでしょうか?

自己理解が深まる
自分のことって意外と分からないものです。仕事に対する価値感や、興味、関心など、自分についてじっくり考える事を支援します。

仕事理解が深まる
従業員の職場での役割や、会社からどういったことを期待されているのかを明確にしていきます。期待されている役割を果たすためにはどういったスキルが必要なのか、そのスキルを得るためにどういったことをすれば良いのかを一緒に考えます。

自らキャリアプランを作る事で、主体性を高める
キャリアコンサルティングでは、やみくもにアドバイスをする事はせず、従業員自身が深く考える事、気づきを得てキャリアプランを立てる事を支援します。与えられるのではなく、自らキャリアプランを作成する事で、主体性が高まります。

従業員が抱えている問題に早期に対応出来る
育児、家事、介護や病気の治療との両立をしながら仕事をされる方が増えてくる事が想定されます。しかしながら、こういったプライベートな事は、なかなか職場の上司や同僚には打ち明け辛く、一人で抱え込んでしまい、離職に繋がるケースもあります。 第3者が関わることで、従業員が抱える問題の早期発見や支援に役立ちます。

人材育成、離職防止に繋がる
キャリアコンサルティングを導入することで、従業員1人ひとりが自分について考える経験をし、主体的に行動するようになっていくと、組織の在り方がだんだんと変化し、学習する組織へと進化していきます。従業員それぞれがやりがいを持って仕事に取り組む事が出来、結果として人材育成や離職防止に繋がります。

今後さらに活躍が場が拡大

キャリアコンサルティングを企業内に導入することで、主体的に考え行動出来る人材へと成長を促すことが出来ます。 時代の変化に伴って、「働き方」を変えていく必要があります。「働き方改革」というと、制度を変える事ばかりに目が行きがちですが、その前に従業員1人ひとりが主体的に考え、行動出来るようになる事が重要です。そのためには、遠回りのように思えても、従業員一人一人の声を聴き、その上で、それぞれが能力を発揮できるような環境整備が必要です。 従業員の離職や社員が育たないと悩まれている企業では、キャリアコンサルティング導入を検討されるのも良いかも知れません。キャリアコンサルタントはまだまだ新しい資格ではありますが、今後さらに活躍の場が増えることと思われます。

井上 夏海

大学卒業後、製薬会社の営業として勤務。その後、結婚し、転勤族の妻となる。結婚後は、技術系派遣の営業、介護職専門の人材紹介会社を経験後、キャリアコンサルタントとして独立。独立後は、中小企業の従業員に対するキャリアコンサルティング(セルフ・キャリアドック)や、女性の就労相談を実施。また、2015年に慢性骨髄性白血病を発症。これをきっかけに、がん患者の就労支援についての活動を行っている。