企業におけるキャリアコンサルタント活用のススメ
~職場での孤立・孤独を解消して離職をストップ~
新卒社員の3割が、3年で辞めてしまうという事実
「新卒社員の3割が3年で辞める」という話を聞いたことがある方も多いと思います。 特に、昨今のような売り手市場においては、転職がより実現しやすく、転職への抵抗感も少なくなってきていると感じます。ますます離職のスピードが速くなる傾向にあるのではないでしょうか。 これまで、企業におけるキャリアコンサルティング(補足1)や、転職支援の面談を通して、多くの「新卒3年以内の若年層」と向き合ってきました。そこから見えてきた離職を誘発する要因と、離職を防ぐためにキャリアコンサルタントがお手伝いできることをお伝えします。
※補足1 企業におけるキャリアコンサルティングとは、キャリアコンサルタントが企業に出向き、従業員とキャリアコンサルタントが一対一で面談を行うことです。個別従業員の課題を整理し、強みやスキルを把握しながら解決へと導き、キャリアプランを明確にしていきます。
データからみる離職の現状
厚生労働省が発表した最新のデータから離職の現状を見てみましょう。
(引用元:厚生労働省HP)

事業規模が小さいほど、離職率が高い
新規学卒就業者の就業後3年以内の離職率は、高卒就職者39.3%、大卒就職者31.8%という結果になっており、未だ「3年3割」は継続中ということになります。このデータで注目したいのは、事業所規模が小さくなるにつれて、離職率が高くなる傾向があるということです。規模が小さくなると、なぜ離職率が高くなるのでしょうか。
もちろんその要因はひとつに絞れません。事業所規模が小さいほど新入社員の人数も少なく、ひとりの離職が数字に与える影響も大きいため、一概に言い切れない部分もあります。ただ、これまで小規模事業所のキャリアコンサルティングを実施するなかで、離職を検討し始めている方が共通して訴えることがあります。
孤立・孤独が離職を後押しする

共通して訴えることとは、
「周りが忙しすぎて教えてもらえない。」
「分からないことを聞ける人がいない。」
「相談できる相手がいない。」
ということです。
全てを一人で解決しなければいけない壁に直面
ご本人のコミュニケーションスタイルから、質問や相談のタイミングを逸してしまっているケースもありますが、「外出先の上司を電話で捕まえるしか教えてもらえる手段がない」「一日中、社内の誰とも接する機会が無い」という状況下に置かれているケースも多いのです。助言をくれる教員や、何でも話せる仲間に囲まれていた学生時代から一転、全てをひとりで解決しなければいけない壁に直面してしまいます。
人員不足により十分に教育する余力がない企業も多く、目の前の業務をこなすことに精一杯な毎日で成長実感が湧かず、身近にロールモデルが存在しないので、長く働き続けるイメージが持てない、その結果、離職を決意する、という流れが派生してしまうのです。
私は、この中核にあるのは「孤独・孤立」だと捉えています。職場での孤独・孤立が離職決意の後押しをしていると思うのです。
自走できるまで伴走してくれるが、キャリアコンサルタントという存在

孤立した状況下では、第三者から承認される機会も少なく、お手本となるロールモデルも存在しないため、自己効力感がどんどん低下していきます。自己効力感とは「自分にはできる!」と思える気持ちのことです。自己効力感が低下すると、自分らしい考え方や行動が制限され、本来の能力を発揮できないという状態に陥ってしまいます。その状態から脱却し、前向きな姿勢で意欲的に行動していけるよう伴走する存在として、キャリアコンサルタントを活用頂きたいのです。
キャリアコンサルティングを受けた方からの声
これまで多くの小規模事業所でのキャリアコンサルティングを実施してきました。実施した方の声を一部ご紹介
「これまで仕事の悩みを誰にも話せなかったので、話せる人がいると思うだけで気分が楽になった。」
「話すことで、大変だ・辛いと感じる原因が明確になりスッキリした」
「自分にとってのやりがいを再発見できて、また頑張りたいという思いが湧いてきた」
というような気持ちの変容から始まり、
「課題の解決のために、○○をしてみようと思いますが、どう思いますか?」
「上司に時間を作ってもらい、今の考えや気持ちを自分から伝えることから始めたいです。」
という思考や行動が少しずつ変化していきます。思考や行動が変容するのは、一度消えかけた意欲が再び生まれ、「この職場で頑張ってみよう!」という希望を持つことができているからと言えます。こられの変容は、承認欲求が満たされることから始まります。実情を知ってくれている存在があるからこそ、自ら考え、行動に移す余力が生まれるのです。そして自ら行動することで自信を得ることができ、先に述べた自己効力感がUPしていきます。
定期的な面談を通して、事業方針に従いながら目標設定を行い、達成に向けた計画実行や振り返りを繰り返すプロセスにおいて、同僚や先輩・上司へ自ら働きかける力を得ながら、自走できる状態を目指していきます。
「セルフ・キャリアドッグ」の活用を!

キャリアコンサルティングを通して、従業員個人の問題解決ができることはもちろんですが、企業全体の組織活性化にも有効です。第三者だからこそ見える現場の特性や課題を経営者にお伝えし、研修やキャリアコンサルティングを通して、現場を巻き込みながら一緒に解決を目指していきます。その仕組みを「セルフ・キャリアドッグ」と呼び、厚生労働省が推奨しています。セルフ・キャリアドッグの導入事例をまとめた厚生労働省のサイトがあるのでご紹介します。
厚生労働省「セルフ・キャリアドック導入支援サイト」http://selfcareerdock.mhlw.go.jp/seminar/
ぜひキャリアコンサルタントをお気軽にご活用ください。